労働裁判の本裁判は非常に時間がかかります。証人尋問も行えば1年かかることもあります。
その間、解雇された従業員は就職ができなければ生活に行き詰まってしまい裁判を続けられなくなってしまいます。そこで、仮処分を申し立てます。
労働者の権利が認められる見通しがあり(被保全権利の存在)、生活に困っているなどの事情(保全の必要性)があれば、裁判所は、使用者に仮に給料を支払えなどと命令します。労働審判は当事者が異議を申し立てれば強制執行できませんが、仮処分自体は当事者が異議を申し立てても強制執行を行うことができます。
いかなる場合に労働審判と仮処分の申立を行うのか、現在の運用状況の違いは次の通りです。
労働審判は3回期日以内に終了します。労働審判委員会が労働審判を出して終わる場合もありますが、3回期日以内に調停が成立して終了する場合もあります。調停が成立する場合は、解雇の事例では使用者が金銭を支払う代わりに退職することが多くあります。現在のところ、労働者が解雇問題について労働審判を申し立てるのは、職場復帰にこだわらないがほとんどです。
一方、仮処分は仮処分命令まで3ヶ月から6ヶ月かかることが多いため、弁護士費用も時間もかかります。労働審判制度があるのにあえて労働者が仮処分を申し立てるというのは、職場に復帰したいという強いこだわりがある場合です。
結論からいいますと、現在の運用状況は以下のとおりです(勿論例外があります)
仮処分=現職復帰にこだわりたいと考える労働者
労働審判=金銭解決でもかまわないと考える労働者
したがって、解雇問題について労働者が仮処分の申立を行った場合は、使用者は紛争が長期化することを覚悟しなければなりません。
労働審判の対象・審理期間